スズメの個体数は、過去数十年にわたり大幅に減少しています。
環境省と日本自然保護協会が実施した「モニタリングサイト1000」の調査によると、スズメの減少傾向は2005年から2022年までの18年間で年間3.6%のペースで減少しているそうです。
この減少率は、環境省のレッドリストにおける絶滅危惧種の基準に相当し、今後の生息数が心配されています。
では、このままスズメが減少し続けるどのような影響がでるのか、今回はまとめてみました。
スズメが減少することによる影響
①食物連鎖の乱れ
スズメは小型の鳥類であり、都市や農村部で多くの捕食者にとって重要な餌の供給源です。
彼らが減少すると、食物連鎖全体に影響を与える可能性があります。
1.捕食者への影響
鷹やフクロウといった猛禽類に加え、イエネコやカラスなどもスズメを捕食しています。
スズメが減少することで、これらの捕食者は代わりの餌を求めて他の小型の鳥や小動物を狙うようになります。
これにより、他の鳥類や小型哺乳類に過剰な捕食圧がかかり、生態系のバランスが崩れる恐れがあります。
2.生態系全体への連鎖的な影響
スズメが減ると、それを捕食していた動物が餌不足に陥り、個体数が減少したり、あるいは他の地域や都市部に移動する可能性があります。
これにより、地域によっては捕食者の減少がもたらす新たな食物連鎖の混乱が生じるでしょう。
②害虫の増加
スズメは繁殖期に多くの昆虫を捕食し、特に農作物に害を与える害虫の制御に一役買っています。
彼らの減少は、害虫の増加につながり、農業や自然環境に深刻な影響を与える可能性があります。
1.具体的な害虫の種類
スズメはアブラムシ、バッタ、イモムシなどを大量に捕食します。
これらの昆虫が大量発生すると、農作物の収穫量に直接影響を与え、農家はより多くの農薬を使わざるを得なくなる可能性があります。
また、庭木や公園の樹木にも被害が及び、都市部でも植物の健康が損なわれる可能性があります。
2.農薬使用量の増加による影響
スズメが減少し、昆虫の増加が続くと、害虫対策としての農薬の使用が増えることが考えられます。
これは、地下水や周辺の環境汚染、生物多様性の減少などの二次的な問題を引き起こす可能性が高いです。
結果として、環境全体に悪影響を及ぼします。
③植物種子散布への影響
スズメは雑食性で、植物の種子も食べます。そのため、彼らが果たす役割は種子散布の面でも重要です。スズメの減少は、特定の植物種に影響を及ぼす可能性があります。
1.種子散布のプロセス
スズメは種子を食べるだけでなく、遠方に運んで自然に散布する役割を果たしています。
特に都市部や郊外の環境において、スズメは多くの植物の種子を移動させ、緑地の再生や植物群落の多様性維持に貢献してきました。
2.特定植物への影響
スズメが好む植物の種子(例えば、小さな草木や花など)の散布が減少することで、その植物群が特定の地域で衰退し、景観や生態系に影響を及ぼすことが考えられます。
また、スズメによる種子散布がなくなることで、他の動物による散布に依存することになり、種子の移動範囲が狭まる可能性があります。
今回のまとめ
スズメの個体数減少は、単に一つの鳥の減少にとどまらず、生態系全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
食物連鎖の乱れや捕食者への影響、害虫の増加による農作物や環境への悪影響、さらには植物の種子散布における役割の喪失など、スズメが果たす重要な役割が見えてきます。
これらの影響が広がると、私たちの日常生活や自然環境にも大きな変化をもたらすかもしれません。
スズメの保護や減少対策について、今後さらなる取り組みが求められる中で、私たち一人ひとりが自然環境を守るためにできることを考えることが重要です。
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